介護

介護分野のスペシャリストが学んでいる、傾聴学

高齢者の方やご家族の方と、さまざまな人と接することがある介護士にとって、

他者とコミュニケーションを図ることは必ず必要になります。

しかし、他者とコミュニケーションを図ることを苦手と感じることがありませんか?

 

ここでは、他者とのコミュニケーションが苦手と感じる方でもできる、

介護の分野においてのスペシャリスト(高いコミュニケーション能力を持っている人)

日頃使っている「傾聴」という技術についてご説明します。

「傾聴」を学び、実践することで、コミュニケーションへの苦手意識を克服し、

自信を持つことができます。

ひよこちゃん
ひよこちゃん
傾聴を学びコミュニケーションに自信を持とう!

傾聴とは

傾聴とは、「耳」「目」「心」を傾けて、高齢者の方の話を聴くコミュニケーション技法

高齢者の方との信頼関係を築くだけでなく、傾聴を通して介護士自身が自分を知り、

感情のコントロール等、精神的成長を促すきっかけにもなります。

 

」と「」と「」と書いて「」という漢字になります。

「聴」の漢字の成り立ち

「聴」の漢字

「耳」を意味する部分、「階段」を意味する部分、「目」を意味する部分、「心」を意味する部分から成り立っていて、

「(耳を突き出し、まっすぐな心で)よくきく」という意味があります。

高齢者の方が思っていることを、介護士が受け入れることで、

心の負担を軽減することができます。

傾聴は、円滑な人間関係を構築していく為に、重要なコミュニケーションスキルであり、

介護の分野だけではなく、ビジネスや日常などあらゆるシーンで役に立ちます。

介護分野における傾聴の目的

  • 高齢者の方をよりよく理解すること

介護士が、熱心に話を聞き、それを肯定することで、高齢者の方は、心を開いてさらに話をしたくなります。

どんどん話をしてくれると、その人が何を考えているのか、理解することができます。

  • 高齢者の方とよりよい関係を築くこと

高齢者の方は社会や人との交流が乏しくなりがちです。

自分の思いに耳を傾けてくれる介護士がいることで、安心感を得て精神的な憩いになります。

傾聴を通して高齢者の方の気持ちに寄り添うことで、信頼関係を築くことができます。

  • 高齢者の方に気持ちを楽にしてもらい、ストレスを解消してもらうこと

悩みや心配、寂しさや苦しさなどの気持ちを持っている高齢者の方は、

介護士に話をして「理解された」、「受け入れてもらえた」と思えることで、

気持ちが楽になります。

 

傾聴によるメリット

高齢者の方に限らず、人は自分のことをわかってもらいたいという想いを持っています。

だから、「話を聞く」ことより「自分の話をする」ことの方が好きな人が多いのです。

 

「高齢者の方の事をより良く知りたい」、「高齢者の方と良い関係を築きたい」という

介護士の思いが傾聴という技術のベースにあるのです。

 

正しく使用すれば「わかってもらえた」という感覚が満たされます。

さらに高齢者の方は「私に関わってもらえた」と感じることができます。

「聞いてくれた=わかってもらえた」という感覚と「関わってもらえた」という感覚を、

味わうことで、誰しもが持っている承認欲求が満たされます。

承認欲求とは
  • 自分を見てもらいたい
  • 自分の考えを理解してもらいたい
  • 自分が役に立つ存在だと認めてもらいたい

と感じることで、社会生活の中で自分を認められたいと思う欲求です。

介護士が自分の話を共感してくれることにより、

「このことに対して不安だったのだな」「このことに対して本当は腹を立てていたのだな」

と、自分の感情が明確になり「この感情を出していい」「こんな感情を持っていてもいい」

と安心感を得られます。(カタルシス効果といいます)

カタルシス効果とは

精神分析の用語で、心の苛立ちやストレスなどの悩みの種や苦悩や怒りなどを言葉にして表現することで、不快な気持ちが取り除かれて安心感を得られる効果のことです。

傾聴が活躍する分野

傾聴が活躍するのは、介護の分野だけではありません。

医療・看護の分野やカウンセリングの分野など、多くの分野で傾聴技術が活躍しています。

ここで、代表的な2つの分野ではどのように傾聴が取り入れられているのでしょうか?

医療、看護分野

医療・看護の分野での、「傾聴」は患者さんの心のケアを目的に行われます。

心のケアといえば、心理カウンセラーなどの心理学系の専門分野だと思われますが、

災害や犯罪被害者などの、うつやPTSDを早期に発見し、心のケアをする為に医学的な知識が必要です。

そのため、看護の分野でも「傾聴」が行われています。

カウンセリング分野

「傾聴」無しにカウンセリングはできないと言えるくらい、不可欠なものです。

プロのカウンセラーは傾聴を適切に使う事で、「この人になら話しても良いかも」と、

相手に感じてもらい、絶対的な信頼関係を築いていきます。

自分の事をしっかりとわかってくれている人がいる。という安心感を与えることができるので、カウンセリングの分野でも「傾聴」が行われています。

傾聴を行う前に知っておくべきこと

傾聴を行う前に、介護士は心理状態をベストな状態に整えなければなりません。

心理状態一つで、反応、関わり方、集中力、思考、感情、言動に違いが生まれます。

精神状態を整えることは、非常に大切なポイントになります。

傾聴を行う前に、必ずベストな心理状態を作れるように下記のことを心がけましょう。

介護士は自分の思いや気持ちをリセットする

まず、介護士は自分の気持ちをリセットします。新しい気持ちが作りやすくなります。

簡単で効果的な方法が深呼吸です。

効果的な深呼吸法

大きく、ゆっくりと深呼吸を6回行い、吸う息・吐く息をしっかりと意識する。

深呼吸に意識を向けることで、頭の中で考えていた事がスッキリとします。

他にも、「身体を動かす」「好きな音楽を聞く」なども気持ちを切り替えるのに効果的。

自分に合った気持ちの切り替え法を見つけましょう。

高齢者にどのような姿勢で接するのか決める

次に、高齢者の方にどのような姿勢で接するのかを決めましょう。

どのような姿勢で接するのかを決めることで無意識に思いや感情・気分が自分の決めた方向に向かいます。

例えば、「高齢者の話に集中する」「否定せずに話を聴く」「高齢者の方を理解しよう」

というように、どのような」を決めることで自分の想う心理状態を作ることができます。

興味関心やワクワク・ドキドキする好奇心を持つ

興味・関心、ワクワク・ドキドキするような好奇心や喜びをイメージすることで、

介護士自身の心理状態が整いやすくなります。

喜びや好奇心といったプラスの感情はモチベーションのアップと行動へと繫がります。

 

それにより、自然と高齢者の方を尊重し、心と耳を傾け高齢者の方の話を聴き、深く理解し、共感することができます。

例えば、

  • 「過去にあった楽しかったこと・うれしかったことを思い浮かべる」
  • 「高齢者の方について知りたいとイメージする」
  • 「その瞬間を大切にする(一期一会)ということを意識する」

というように、喜びや好奇心・感謝の念をイメージできれば短時間で良い心理状態にすることができます。

介護士自身の意識に目を向ける

介護士自身が今何を考え、何を感じているのかということにも意識を向けましょう。

怒りや悲しみ、疲れといったマイナスな感情を抱えているならば、高齢者の方の話を集中して聴くことはできません。

 

「今は何を考えているか」「何を感じているか」「集中できるのか」と言う自問自答で、

今の自分自身に意識を向けることができます。

自身に意識を向けると、「プラスの感情を生む為にはどうすればいいのか」と考えるようになります。

高齢者の感情と介護士自身の感情を区別する

感情移入しやすい人ほど高齢者の方の話を聴いていて、

怒りや悲しみといったマイナスの感情を受け取りやすくなります。

そうなると、心理状態が揺れ動いてしまうので正しい傾聴ができなくなります。

 

高齢者が感じた思いや感情は自分の思いや感情ではないことを自覚しましょう。

傾聴を使い、信頼関係を築く為の6つの基本

ここからは、高齢者の方と信頼関係を築くため効果的な「傾聴」のテクニックを説明します。

この6つが「傾聴」の基本になります。

環境作り

高齢者の方が緊張したままでは、思ったことやありのままの自分を出すことができません。

ありのままの自分を出すことができないと「分かってもらえた」という安心感を持ってもらうことは難しいです。

高齢者の方が、リラックスして話ができる環境を最初に作る必要があります。

 

注意点として、その場で聞こえる音に注意しましょう。

会話をする中で、雑音は極力少ない方が集中できます。

 

次に、話し手である高齢者の方の視界に注意しましょう。

人の行き来が見えたり、ドアが開いたり閉まったりすると、落ち着いて話ができません。

 

そして最後に、聴き手である介護士は自分の表情にも気をつけましょう。

高齢者の方が安心できる様

「笑顔で、偉そうにのけ反り、腕は組まず、少し前のめりの姿勢」で話を聴きましょう。

多少目線をずらす事があっても、基本はしっかりと相手の目を見ましょう。

「うなずき」と「あいづち」

「うなずき」と「あいづち」は、傾聴では積極的に取り入れましょう。

うなずく」とは、肯定・同意といった気持ちを表し首を縦に振ること。

あいづち」とは、話に合わせて受け答えの言葉を挟み、合いの手を入れること。

「うなずき」と「あいづち」があることで、「話を聴いてくれている」と感じます。

くりかえし話す(オウム返し)

オウム返しとは、高齢者の方が言われた言葉、丸ごと繰り返し話をすることです。

繰り返し話をすることで「わかってもらえている」と感じます。

 

繰り返し話をする為には、集中して話を聴かなければいけません。

はっきりいって慣れないうちはとても疲れます。

座って話を聴いているだけですが、汗をかく方も多くおられます。

 

そのくらい集中して高齢者の方の話を聞こうという姿勢に、信頼が生まれます

そして、高齢者の方の気持ちを、より正確に理解することができます。

気持ちを汲む(共感する)

人には様々な感情があります。

楽しさや喜びといったプラスの感情やイライラや怒り、寂しさや不安などマイナスの感情もあります。

 

高齢者の方が話をする中で、一番わかって欲しいことは、感情(気持ち)なのです。

高齢者の方の表情や姿勢、視線、声のトーンから感情(気持ち)を読み取ります。

そして、読み取った感情(気持ち)を言葉にして伝えます

高齢者の方は「分かろうとしてくれている」と思えるので、気持ちが楽になります。

質問(インタビュー)

質問(インタビュー)は、会話の方向性を決める、とても重要な技術です。

質問は、大きく分けて2種類あります。「オープンクエスチョン」「クローズクエスチョン」です。

「オープンクエスチョン」

開かれた質問という意味で、話し手である高齢者の方が自由に話をすることができる質問のこと。

「クローズクエスチョン」

「はい」か「いいえ」で答えられる質問や、年齢を聞く質問などの様に、答えが限定される質問のこと。

基本的に、傾聴ではオープンクエスチョンをメインに使います

高齢者の方が話したい事を選んで、自由に話してもらう事に焦点を置いているからです。

自由に話せる質問だと、自分のことを尊重されているように感じられます。

 

ただし、オープンクエスチョンメインで会話を進めるのは、意外に難しいので経験が必要になります。

介護士は、何度も実践しコツをつかむ必要があります。

要約(話をかいつまむ)

話を聴いていると、「話がこんがらがってきたな」と感じられる時があります。

傾聴における要約とは、そんな時に「今までの会話をまとめますと・・・。」という感じでそれまでの会話全体の大切な部分をまとめて伝えることです。

会話の大切な部分とは、高齢者の方が苦しんでいるポイント高齢者の方自身が頑張っている事などです。

要約自体は必ずやらなければいけないことではありませんが、「話がこんがらがってきた」と感じる時に使うことで、話し手である高齢者の方が頭の中で話の整理をつけることができます。

傾聴で注意すべき10のポイント

実は、気が付かずにやってしまっているダメな話の聴き方があります。

良かれと思って、知らず知らずのうちにダメな話の聴き方をしてしまうと、その瞬間に高齢者の方は違和感を覚え、心を閉ざし、話すことをやめてしまいます。

以下は、傾聴において注意したいポイントです。

傾聴のポイント
  1. 助言をしてしまう
  2. 言いくるめてしまう
  3. 哀れみを持ってしまう
  4. 自分の話をしてしまう
  5. 否定的な判断をしてしまう
  6. 話を中断してしまう
  7. 話に無反応になってしまう
  8. 話に注意散漫になってしまう
  9. 間や沈黙に我慢できなくなってしまう
  10. 話を誘導してしまう

高齢者の方との会話でこの10のポイントを意識します。

あくまで、話をするのは高齢者の方です。

傾聴スキルを習得すると得られる効果

傾聴の技術を習得し実践すると、高齢者の支援(サポート)の場面はおろか、あらゆる生活の場面において素晴らしい効果を生みだします。

  • 多くの人と信頼関係が生まれる
  • 相手の長所に意識が向く
  • 人間力が磨かれる
  • 会話の組み立てが上手になる(会話の流れを自分で作れる)
  • 高齢者の方だけでなく同僚・上司・部下と良質な関係が築ける  等

傾聴を習得したスペシャリストが生みだしている効果です。

本当は教えたくない。介護分野のスペシャリストが学ぶ傾聴学 まとめ

傾聴を学ぶと、人間関係を豊かにすることができます。

傾聴を学ぶことで、コミュニケーションが円滑になり、高齢者の方を理解し、気持ちを汲み取り、共感することができるようになります。

良好な人間関係が築け、時に解決が難しいと思えるような問題の解決にもなります。

職場や日常生活でのコミュニケーションにおいても、仲間、部下、家族、恋人、友人の悩みや問題解決のサポートもできるようになります。

そして傾聴は、自己重要感を高め、自分の思考、感情、人生を整理し、より良い人生や悩み・問題の解決に向けて、必要な行動や変化を生み出せるなど、とても多くの効果があります。

 

介護分野のスペシャリストは、高齢者の方のみならず、職場の同僚・上司・部下にも傾聴というコミュニケーション技術を使うことで豊かな人間関係を築いています。